WordPress公式の「MCP Adapter」は、AIからWordPressの機能を呼び出すための接続基盤です。サイトに登録・公開されている機能を、接続したユーザーの権限で使います。導入だけで、記事の作成やデザイン変更まで一括でできるようになるわけではありません。
2026年10月、Xでこのプラグインの紹介や対応開発の投稿が見られます。「AIにサイトを直接操作してもらえるのか」「これまでのWordPress運用はどう変わるのか」。気になるのは、接続できることと、実際の仕事を任せられることの間にある違いではないでしょうか。
ここでは公式発表・開発資料を比較し、現在の位置づけを解説します。後半の「接続・機能・権限」の比較表は、一次資料をもとにしたSEVEN PEBBLES独自の整理です。自社サイトへ導入して計測した実験記事ではありません。情報の確認日は2026年10月18日です。
Xで紹介されているのは、WordPressとAIの接続基盤
WordPressのCore AIチームは、10月7日の公式発表で、MCP AdapterをWordPress.orgのプラグインディレクトリで公開したと案内しました。以前からGitHub等で開発されていた仕組みを、WordPressのプラグインとして導入しやすくしたことが、この発表のポイントです。WordPress本体へ新たに内蔵されたという意味ではありません。
Xでは、WordPressプラグイン開発者が対応作業を報告する投稿があり、公式ディレクトリへの掲載を紹介する投稿も確認できます。一方、AIが実際に使える操作の充実を求める投稿もあります。個別投稿から確認できる範囲の話題であり、X全体の流行規模や導入効果を示すものではありません。
この反応の違いは、「共通の接続口ができること」と「実行できる作業がそろうこと」を分けると理解しやすくなります。公式プラグインページで確認した版は0.7.1、更新履歴の日付は10月15日です。導入時には、その時点の版と対応条件を改めて確認してください。
MCP Adapter・Abilities API・AIアプリの役割

MCPはAIと外部システムをつなぐ共通の通信方式です。WordPress側では、Abilities APIが、個々の機能を名前・入力・出力・実行処理などとともに登録します。たとえば「サイト情報を取得する」という一つの操作を、AIにも理解しやすい形で説明する仕組みです。
MCP Adapterは、そのうちMCP経由で利用できるようにした機能をAI側へ伝え、呼び出しを仲介します。AIアプリは、使える機能を調べて依頼します。接続する役、実際の処理を持つ役、依頼を組み立てる役が分かれている、と考えてください。
| 構成要素 | 担当すること | それだけでは決まらないこと |
|---|---|---|
| AIクライアント | 指示を受け取り、使える機能を探して呼び出す | サイト側にどんな機能が用意されているか |
| MCP Adapter | AIとWordPressの機能の間をつなぐ | 記事作成・画像登録などの業務機能そのもの |
| Abilities APIと登録する側の実装 | 個々の機能と入出力・実行条件を定義する | その仕事をどのユーザーへ許可するかという運用判断 |
なお、機能の説明で使われる「public」は、MCP側へ公開する設定の話です。「誰でもログインなしで使える」と読み替えるものではありません。機能の公開設定に関する開発資料と権限の資料は、公開する範囲と実行時の許可を分けて説明しています。
今できることと、追加対応が必要なこと
WordPress本体の標準機能を登録する公式コード資料では、サイト情報、現在のユーザー情報、環境情報を取得する機能を確認できます。これらは情報の取得であり、記事を作成・公開する処理とは違います。実際の一覧は、WordPressの版、導入しているプラグイン、公開設定などによって確かめます。
| 任せたいこと | 確認する機能 | 導入判断 |
|---|---|---|
| WordPressやサイトの情報を知る | 該当する情報取得機能と、その出力項目 | 読める情報と実行条件を確認して試す |
| 記事の下書きを作る | 投稿を作成する機能が別途登録・公開されているか | MCP Adapterの導入だけでは成立と判断しない |
| ページのデザインやパターンを変える | 対象のテーマ・プラグインが公開する機能 | 対応範囲を開発元の資料と実際の一覧で照合する |
| 本番の記事を公開する | 公開操作を扱う機能、ユーザー権限、承認の手順 | 下書き作成と分けて可否・確認者を決める |
この表は「全部できる」という機能一覧ではありません。やりたい仕事ごとに、必要な処理がそのサイトにあるかを判断するための表です。たとえば投稿作成のアビリティがなければ、接続先を追加するだけで投稿できるようにはなりません。逆に、対応機能を持つプラグイン等を追加した場合は、その処理範囲を改めて確認します。
AIが別の経路からREST APIやブラウザを操作できたとしても、それをMCP Adapter単体の機能と混同しないことも大切です。比較するときは「何を経由し、どんな機能と権限を使ったか」をそろえます。
「つながったのに動かない」を接続・機能・権限に分ける
導入の相談では、「接続できません」と「操作できません」が混ざりがちです。次の表は公式資料の構造を、担当者が確認できる状態へ置き換えた独自の整理です。エラー文だけで原因を確定するものではなく、開発担当へ渡す証跡をそろえるために使います。
| 観察した状態 | 次に分けて見ること | 残しておきたい記録 |
|---|---|---|
| 接続そのものが成立しない | 接続先URL、使うクライアント、認証方式、サーバー側の応答 | クライアント名、日時、エラー、対象環境 |
| 接続できるが、任せたい機能が見つからない | 機能の登録、MCP向け公開設定、利用者から見える一覧 | 見えている機能名、期待した機能、提供するプラグイン |
| 機能は見えるが実行時に拒否される | その機能の許可条件、接続したユーザーの権限 | 機能名、実行者、入力、拒否された内容 |
| 実行は終わったが結果が意図と違う | 入力の解釈、返却内容、実際のWordPress上の変化 | 変更前後、対象ID、確認画面、人による判定 |
たとえば「記事を下書きに保存してほしい」という依頼なら、まず投稿作成機能の有無を調べ、次に保存状態を指定できるかと実行権限を確認し、最後にWordPress上で本当に下書きかを見ます。「接続成功」を、そのまま「業務完了」の記録にはしません。
権限も、ロール名だけで一括判断しないようにします。公式の標準機能でも、サイト情報の取得にはmanage_optionsの確認が入り、現在のユーザー情報とは条件が異なります。読み取りだから同じ権限でよいとは限りません。WordPressの作業別のユーザー権限の選び方と合わせて、必要な操作から整理してください。
使うAIによって、接続条件も変わる
「Claudeからつなぐ」といっても、ブラウザで使うサービス、デスクトップアプリ、開発用ツールでは設定方法が違います。MCP Adapter公式のサイト運営者向けガイドは、直接HTTPで接続する方法、補助プログラムを経由する方法、ローカルでWP-CLIを使う方法を区別しています。
同ガイドの10月18日時点の案内では、Web版のClaudeやChatGPTが使うOAuth接続に必要なサーバーを、WordPress本体やMCP Adapterが単独で提供するわけではありません。利用するサービス名だけで接続可能と決めず、クライアントが受け付ける認証方式と、サイト側が提供する方式を照合します。サービス独自の連携機能とは別に確認してください。
アプリケーションパスワードを使う構成では、それを発行したWordPressユーザーの役割と権限で処理が実行されます。専用ユーザーや接続ごとの認証情報、停止する方法を決めておくと、誰の操作かを追いやすくなります。具体的な設定値は、使用するクライアントと公式ガイドの現行手順に合わせます。
制作・運用の担当者が、最初に試す範囲
最初の検証は、任せたい仕事を一つ選び、利用する機能の名前と出力を確かめるところから始めると整理しやすくなります。以下は本稿で提案する進め方です。特定の環境での成功や所要時間を保証する手順ではありません。
- 対象を検証環境にする。 WordPressとプラグインの版、使うAI、接続方式を控えます。
- 公開されている機能を一覧にする。 期待する仕事に必要な機能があるかを確認します。設定や依頼文だけで機能を増やせると考えないようにします。
- 一つの情報取得で結果を照合する。 許可された機能の説明と出力項目を確認し、返った情報を管理画面や設定値と比べます。
- 変更処理を試す場合は、下書き等の範囲を決める。 作成と公開を分け、対象・変更点・保存状態を人が確認します。
- 停止と復旧を確かめる。 接続を止める担当、確認するログ、必要なバックアップと復元の手順を整理します。
書き込み機能を加えるなら、Webサイト更新の承認フローも一緒に設計します。復旧の準備はWordPressバックアップの復元テストを参照してください。MCP Adapterが承認や復旧まで自動で用意するという意味ではありません。
今の導入判断は「任せる仕事」と「使える機能」を合わせること
MCP Adapterのディレクトリ公開は、WordPressとAIをつなぐ共通基盤を導入しやすくする動きです。その価値を考えるときは、AIで何でもできるかという大きな問いから、サイト情報の取得、特定ページの下書きなど、具体的な一つの仕事へ分けてください。
その仕事を担う機能が登録されているか、MCP側へ公開されているか、必要な権限で実行できるか、結果を誰が確認するか。この順で見ると、今試せることと追加の対応が必要なことを分けて相談できます。AIを含む制作全体の判断は、AI時代のWebサイト制作で発注前に決めることも参考にしてください。
出典・確認した資料
以下は2026年10月18日に確認した資料です。開発資料は更新されるため、導入時には対象のバージョンと現行の案内を確認してください。
